京都の正月、お膳に並ぶ「にらみ鯛」
私は京都に住んでいますが、京都の正月三が日の食卓の膳には、毎回「にらみ鯛」という尾頭付きの鯛の塩焼きが登場します。
「よお、おにらみやす」三日間の間、この鯛は食卓におせちと並んで登場するものの、箸をつけてはいけない決まりになっています。
縁起ものとして、膳に上げられては箸もつけることなく下げられる。まったく変わった風習です。
三日間の間、鯛は家族をにらみ回し、家族もまた食べたくて鯛をにらむ。
どうしてこんな奇習が生まれたのかはわかりませんが、鯛と言えば「腐っても鯛」と言われる昔からの高級魚。おめでたい時と言えば鯛。だから正月に食べたいけれど、ありがたみを残すためにわざわざすぐに箸をつけないのかなあと私なりに考えたことがありました。
母に聞いてみても「そういう風習だから」としか答えてもらえず、未だに明確な答えは知りません。
昔はきっちり正月三が日が明けて4日に食べていましたが、最近では2日目に食べたりしています。旧家ではまだしきたりをきちんと守っている所もあるそうです。
箸をつける頃にはすっかり冷えて固くなった鯛の身は、温めなおしても正直あまりおいしいとは言えないのですが、その固く締まった身を噛みしめると、今年も正月が来たんだなあという実感が湧くから不思議です。
おいしくないと言いながら、新年になると必ずお膳に上がる「にらみ鯛」は、失われつつある古い京文化の名残をとどめる貴重な風習かもしれません。
